今日は牛久駅前のエスカードホールにて催されたチェロとピアノのコンサートの調律に行ってきました。
演奏者は牛久市出身のご兄妹、平根亮さん(チェロ)と妹さんの彩乃さん(ピアノ)です。
演奏を聴けるのは去年の同じ場所でのコンサート以来の1年ぶりでしたので、とても楽しみにしていました。
というのも、このお二人は普段はドイツで活動していらっしゃるので、演奏を聴きたくとも日本にいないのです。
それについては、2016年10月1日の記事をご覧ください。
さて、今回のご兄妹が帰国されてから演奏会の前にご自宅のピアノのメンテナンスにも伺いました。 長い海外生活もあってか、以前から二人とも若いのにしっかりしているなぁという印象でしたが、今年はもっと成長して堂々とした雰囲気が感じられました。 良いことも苦労も含めていろんな事を乗り越えているのだろうなと感心しました。偉いなあ。(なにしろ自分の20代半ばのことを思い出すと、彼らとの違いにもう嫌になっちゃいます。思い返すとあの頃はまだ思春期を引きずっておりました。あぁ恥ずかしい。)
今日、会場に着いてピアノを弾いてみたら、ピッチがなんとA=445〜6Hz(ヘルツ)くらいに上がってしまっていました。 前の日までしばらく雨が降っていたのもあるのかもしれませんが、湿度が高いとピアノは中音域だけ低音や高音域よりも音の高さが上がってしまうのです。 クラシックの演奏会だとA=442Hzが一般的なので3Hzくらい下げなければいけません。 実はピアノの音というのは、下がった音を上げるときよりも上がった音を下げるときのほうが安定しにくいのです。 なので、迷わず中音部分を2度調律することにしました。狂いの大きい部分を(時には全体やることもありますが)ざっくりと正しい高さに調律し、それから全体を一からやり直して調律すると大概の場合は安定してくれるのです。 ただ時間が余計にかかるので、少しリハーサルを待ってもらってしまいましたが。
リハーサルが始まってからは、僕は今回は自主的にカメラマンをしておりました。 それでは、以下は何枚か僕のカメラの腕をご披露させていただきましょう。 (※ほんとは超素人です。憧れの一眼レフを買ったものの分からなくてほほんど触っておりません)
まずは、ホール全景
真剣な表情で超ハイポジションでチェロを弾く亮さん。と思いきや、実はまだチューニングしているところ。
(あ。このへんだ!)と、音が合った瞬間。
さて、リハーサル開始♪
バリアングルが使いたくて、無駄に低いところから撮ってみた。
なんだか笑っているピアノの彩乃さん。
曲が盛り上がったところでピアニストが上のほうを見上げる切ないような表情って本当に素敵ですよね☆
でもよく見たらお兄さんもずっと斜め上のほうを凝視していた。何を見ているのだろう?(ちなみに僕は演奏中は無意識に目を閉じて唇がとがってしまうようです。最悪。)
終演後のさわやかな笑顔。素晴らしい演奏でした♪
家族写真。 達筆ののコンサートの案内はおじいさまが書かれたそうです。 家族愛がこもってますね!
さて、肝心の演奏会の中身についてですが。 まずはともかく演奏会のプログラムを見ていただきましょう。
まず目が行くのがチェロソナタがシューマンもそれに含めるとすれば3つというボリューム! 去年はベートーヴェンの2番のソナタとメンデルスゾーンの2曲と、あとはわりと有名な小品だったのと比べると、今年のプログラムからは「俺が弾きたい曲を弾くんだ!!」的な意志の強さが感じられました。 僕もクラシック音楽が大好きでそれなりにたくさん聴いていると思っていたのですが、正直今回はベートーヴェンのピアノソナタ28番とショパンの軍隊ポロネーズしか知りませんでした。 いかに自分の視野が狭かったかに気付かされました。 ポルポラなんて初めて聞きましたし。(ヨーゼフ・ハイドンの先生なんだそうです。) でもどの曲も本当に素晴らしく、プログラムにも書いてある通り、バロック〜古典派〜ロマン派〜近現代という音楽史の流れを自然に体感することができて、素晴らしい選曲だなぁと思いました。 そして聴き終わってみると、これもまさにプログラムにあるとおりで「皆様に色々な曲を知って頂きたいと思い」というところにナルホドと思い、最初に「俺が弾きたい曲を〜」なんて勘違いした自分の浅はかさを恥じるのでした。
そのようなわけでコンサート全体がバランスが良くて素晴らしかったのですが、特に心に残ったのはと言われればベートーヴェンのピアノソナタ28番とシューマンの幻想小曲集でした。
ベートーヴェンの後期のピアノソナタは本当に深みのある傑作ばかりでしょうけれど、もっと派手な作品もあるのにこの28番を選ぶというのがまず彩乃さんらしいし、それがよく合っていると思いました。 戦後の混乱や私生活の辛いことでヴェートーベンはこの頃作曲の筆が進まなくなっていたらしいですが、ゆっくりと穏やかながら沈んだように始まる第一楽章から、苦悩を乗り越えて第3楽章の切なくも華やかさを感じるフィナーレを聴くと、ベートーヴェンはどんなに辛くとも心の中の芯は非常に強かったのだなと感じます。 彩乃さんの演奏もそういう気持ちに本当に静かに強く寄り添っているような表現で、若いのに(何度も言うとおじさん臭いですが)今までどんな苦労をしたのだろうなんて思ってしまいます。(実際に聞いた苦労は、ロシアでよく停電して大変だったとか、水道が出ないとかでしたが。)
シューマンの幻想小曲集は名前を聞いたことくらいしかなかったのですが、もうピアノの前奏が始まった瞬間から一気に物憂げなシューマンの世界に引き込まれました。 亮さんの繊細な弦楽器独特の細やかな表現がシューマンの感じやすくて浮き沈みの激しい劇的な音楽にぴったりでした。 あと、僕なんぞがこんなことを書くのは全くおこがましいのは承知してはいるのですが、今年の亮さんの演奏はすごく自信に満ちていて、強い心をもって演奏している印象を受けました。 特にピアニシモの時の音圧が素晴らしかったです。 昔、レナード・バーンスタインがどこかのオーケストラと練習をしていたときに団員たちに向かって「強い音は必要ありません。 ただ、心をフォルテにもってください。」と言ったそうですが、小さな繊細な表現をするときの心の強さっていうものこそ聴き手の心にぐっと入ってくる感じがします。 そういう演奏を今日は聴けました。
僕は去年に引き続き開演前のチケットもぎりや受付も手伝ったのですが、それもとても楽しかったです。 去年は平根さんちのお父さんと二人で受付をしてアワアワしていたのですが、今年は爽やか笑顔の女性スタッフがいて大変心強かったです。
終演後の和やかな雰囲気もとても良かったです。 お二人を小さなころから知っているご近所さんたちもたくさんいらしていて微笑ましかったです。 同じ茨城県南出身としては彼らにはこれからもますます頑張って活躍してほしいですね! 応援しています!
というわけで、1年ぶりの平根さんご兄妹による素晴らしいコンサートのレビューでした。
また来年が楽しみです!(^0^)
おわり
最後ですが、お二人のプロフィール。