- 2016.01.20 Wednesday
お気に入りの一枚〜その2
さて、昨日から始まった新コーナー「お気に入りの一枚」。
書いていてとても盛り上がったので(ひとりで)、さっそく二枚めをご紹介したいと思います!(o^^o)
今日の一枚はこちら!
サー・エドワード・エルガー作曲のオラトリオ「神の王国」レナード・スラットキン指揮、ロンドンフィルハーモニー管弦楽団の演奏による2枚組のディスクです。
このCDは21歳くらいの頃購入したのですが、この時はなんと50数枚を一度に買ったのです。その頃働いていたピアノ店に出入りしていた運送会社の人がどこかの倒産した会社の社長さんの債権を持っていたのですが、その社長さんがクラシックマニアだったようで未開封のCDをわんさか差し押さえてきたのです。
その頃僕は声楽曲にハマっていたのですが、その社長さんのコレクションにもオペラや宗教曲がたっくさんあったのです。カール・ベーム指揮の「ニーベルングの指環」全曲の12枚組ボックスとか、100年近く前のメトロポリタン歌劇場の大歌手たちのヒストリカル録音6枚組とか。あれもこれも聴きたくなってしまいどんどん手に取ってしまったのですが、その中にあったのがこのエルガーのオラトリオでした。
で、もちろんこの「神の王国」というオラトリオ自体も素晴らしい曲だったのですが、僕がノックアウトされてしまったのは、ディスク2の終わりにオマケのように入っている2曲だったのです。
バッハ〜エルガー編曲
幻想曲とフーガ ハ短調(BWV537)
ヘンデル〜エルガー編曲
序曲 ニ短調(シャンドス・アンセム第2番より)
この2曲でした。
どちらもバロックのオルガン曲をエルガーがオーケストラに編曲したものなのですが、これが…とてもバロックには思えない、ロマンチズムが炸裂したバッハとヘンデルになっているのです!
初めて聴いた時からすっかり虜になってしまいました。
特にバッハのほうなんて、原曲は17世紀の教会の雰囲気たっぷりの厳かな曲なのに、エルガーが編曲するとティンパニのマレットのロールがドロドロしてたりとか、ホーンセクションがハイノートで大活躍したりとか、打楽器も大爆発していて、メロディーも構成も忠実にバッハなのにもかかわらず、完全に20世紀のエルガーの音楽になっているのです。
幻想曲の部分は現代の映画音楽にしても全く違和感がないくらいにムーディーで、悲劇に溢れた雰囲気が非常に重たく包み込んできて、部屋を真っ暗にして目を閉じて眉間にしわを寄せたくなってしまうような音楽です。ストリングスが涙が出そうなくらいに美しくて、実に厚みのある感動的な曲になっています。
対して後半のフーガは、もうまるでお祭りのように盛り上がる盛り上がる!打楽器も金管楽器も待ってましたとばかりに大爆発してしまうのです!もう、ふざけてるのかと思うくらいにドッカンドッカンしてて、まるでバロックの面影はありません。でもちゃんとフーガなので同じモチーフがどんどん重なっていくのですが、畳み掛けるという表現がぴったりなくらいにどんどんヒートアップしていくのです。車の運転をしながら聴いていると、つい大声でイェェェーーーーッ!!と咆哮してしまうくらいです。なんとも痛快な、スカッと気持ちの良い非常にカッコいい大迫力の編曲です。バッハが聴いたらきっと腰抜かすでしょうね。(^_^;)
ライナーノーツに書いてあるのですが、この編曲が出来た経緯がまた面白いのです。
1920年にエルガーは友達のリヒャルト・シュトラウスとパリのカフェでランチをしていたそうです。その時に話しが盛り上がって、エルガーが「実はさぁ、バッハのオルガン曲をオーケストラ編曲したいな〜って思ってたんだけどさ。後半のフーガを僕が編曲するから、前半の幻想曲を君やらない?そして合作で出版したら面白いと思うんだけど。どう?」それを聞いたシュトラウスは二つ返事で「へー!面白そうだね!いいね、よし!ぜひ2人でやろう!」と約束をしたそうです。エルガーはさっそく取り掛かり、翌年の4月にはフーガの編曲を完成させ、あとは幻想曲の仕上がりを待つばかりだったのですが、当のシュトラウスがいつまでたっても取り掛かる気配を見せません。(当時のリヒャルト・シュトラウスはすでに超売れっ子オペラ作曲家、指揮者だったので忙しかったのかもしれませんね)そこでエルガーは「もういい!自分でやる!」と、しびれを切らして幻想曲の方も手がけ、1922年6月には出来上がったそうです。
でも、これはエルガーが両方編曲して大正解だったのではないかと思います。本当にエルガーらしい!フーガのノリノリの盛り上がりが威風堂々第1番の元気がいい部分の盛り上がり方と似ている気がします。
しかも、この演奏がまたキレッキレですごいのです!特に管楽器。 トランペットなんてジャズプレイヤーばりにハイノートを炸裂させていて、ものすごく気持ちいい!
僕はその後エサ・ペッカ・サロネン指揮のこの曲も聴いたのですが、キレッキレさでこちらのレナード・スラットキンに軍配が上がります。
ところで、このCDを入手した頃、ちょうどつくばのホールにスラットキンがフランス国立リヨン管弦楽団を連れて公演に来たのです。しかも、ソリストにマルタ・アルゲリッチを連れて!もちろん聴きに行きました♪
なんだか、半分くらいただの思い出語りみたいになってしまいました。(^_^;)
年を取った証拠かもしれませんね。いかんいかん。
というわけで、お気に入りの一枚、スラットキン指揮の、バッハの幻想曲とフーガ(エルガー編)でした。
長々と失礼いたしました。m(_ _)m
おわり
書いていてとても盛り上がったので(ひとりで)、さっそく二枚めをご紹介したいと思います!(o^^o)
今日の一枚はこちら!
サー・エドワード・エルガー作曲のオラトリオ「神の王国」レナード・スラットキン指揮、ロンドンフィルハーモニー管弦楽団の演奏による2枚組のディスクです。
このCDは21歳くらいの頃購入したのですが、この時はなんと50数枚を一度に買ったのです。その頃働いていたピアノ店に出入りしていた運送会社の人がどこかの倒産した会社の社長さんの債権を持っていたのですが、その社長さんがクラシックマニアだったようで未開封のCDをわんさか差し押さえてきたのです。
その頃僕は声楽曲にハマっていたのですが、その社長さんのコレクションにもオペラや宗教曲がたっくさんあったのです。カール・ベーム指揮の「ニーベルングの指環」全曲の12枚組ボックスとか、100年近く前のメトロポリタン歌劇場の大歌手たちのヒストリカル録音6枚組とか。あれもこれも聴きたくなってしまいどんどん手に取ってしまったのですが、その中にあったのがこのエルガーのオラトリオでした。
で、もちろんこの「神の王国」というオラトリオ自体も素晴らしい曲だったのですが、僕がノックアウトされてしまったのは、ディスク2の終わりにオマケのように入っている2曲だったのです。
バッハ〜エルガー編曲
幻想曲とフーガ ハ短調(BWV537)
ヘンデル〜エルガー編曲
序曲 ニ短調(シャンドス・アンセム第2番より)
この2曲でした。
どちらもバロックのオルガン曲をエルガーがオーケストラに編曲したものなのですが、これが…とてもバロックには思えない、ロマンチズムが炸裂したバッハとヘンデルになっているのです!
初めて聴いた時からすっかり虜になってしまいました。
特にバッハのほうなんて、原曲は17世紀の教会の雰囲気たっぷりの厳かな曲なのに、エルガーが編曲するとティンパニのマレットのロールがドロドロしてたりとか、ホーンセクションがハイノートで大活躍したりとか、打楽器も大爆発していて、メロディーも構成も忠実にバッハなのにもかかわらず、完全に20世紀のエルガーの音楽になっているのです。
幻想曲の部分は現代の映画音楽にしても全く違和感がないくらいにムーディーで、悲劇に溢れた雰囲気が非常に重たく包み込んできて、部屋を真っ暗にして目を閉じて眉間にしわを寄せたくなってしまうような音楽です。ストリングスが涙が出そうなくらいに美しくて、実に厚みのある感動的な曲になっています。
対して後半のフーガは、もうまるでお祭りのように盛り上がる盛り上がる!打楽器も金管楽器も待ってましたとばかりに大爆発してしまうのです!もう、ふざけてるのかと思うくらいにドッカンドッカンしてて、まるでバロックの面影はありません。でもちゃんとフーガなので同じモチーフがどんどん重なっていくのですが、畳み掛けるという表現がぴったりなくらいにどんどんヒートアップしていくのです。車の運転をしながら聴いていると、つい大声でイェェェーーーーッ!!と咆哮してしまうくらいです。なんとも痛快な、スカッと気持ちの良い非常にカッコいい大迫力の編曲です。バッハが聴いたらきっと腰抜かすでしょうね。(^_^;)
ライナーノーツに書いてあるのですが、この編曲が出来た経緯がまた面白いのです。
1920年にエルガーは友達のリヒャルト・シュトラウスとパリのカフェでランチをしていたそうです。その時に話しが盛り上がって、エルガーが「実はさぁ、バッハのオルガン曲をオーケストラ編曲したいな〜って思ってたんだけどさ。後半のフーガを僕が編曲するから、前半の幻想曲を君やらない?そして合作で出版したら面白いと思うんだけど。どう?」それを聞いたシュトラウスは二つ返事で「へー!面白そうだね!いいね、よし!ぜひ2人でやろう!」と約束をしたそうです。エルガーはさっそく取り掛かり、翌年の4月にはフーガの編曲を完成させ、あとは幻想曲の仕上がりを待つばかりだったのですが、当のシュトラウスがいつまでたっても取り掛かる気配を見せません。(当時のリヒャルト・シュトラウスはすでに超売れっ子オペラ作曲家、指揮者だったので忙しかったのかもしれませんね)そこでエルガーは「もういい!自分でやる!」と、しびれを切らして幻想曲の方も手がけ、1922年6月には出来上がったそうです。
でも、これはエルガーが両方編曲して大正解だったのではないかと思います。本当にエルガーらしい!フーガのノリノリの盛り上がりが威風堂々第1番の元気がいい部分の盛り上がり方と似ている気がします。
しかも、この演奏がまたキレッキレですごいのです!特に管楽器。 トランペットなんてジャズプレイヤーばりにハイノートを炸裂させていて、ものすごく気持ちいい!
僕はその後エサ・ペッカ・サロネン指揮のこの曲も聴いたのですが、キレッキレさでこちらのレナード・スラットキンに軍配が上がります。
ところで、このCDを入手した頃、ちょうどつくばのホールにスラットキンがフランス国立リヨン管弦楽団を連れて公演に来たのです。しかも、ソリストにマルタ・アルゲリッチを連れて!もちろん聴きに行きました♪
なんだか、半分くらいただの思い出語りみたいになってしまいました。(^_^;)
年を取った証拠かもしれませんね。いかんいかん。
というわけで、お気に入りの一枚、スラットキン指揮の、バッハの幻想曲とフーガ(エルガー編)でした。
長々と失礼いたしました。m(_ _)m
おわり