さて、昨日から始まった新コーナー「お気に入りの一枚」。
書いていてとても盛り上がったので(ひとりで)、さっそく二枚めをご紹介したいと思います!(o^^o)

今日の一枚はこちら!




サー・エドワード・エルガー作曲のオラトリオ「神の王国」レナード・スラットキン指揮、ロンドンフィルハーモニー管弦楽団の演奏による2枚組のディスクです。
このCDは21歳くらいの頃購入したのですが、この時はなんと50数枚を一度に買ったのです。その頃働いていたピアノ店に出入りしていた運送会社の人がどこかの倒産した会社の社長さんの債権を持っていたのですが、その社長さんがクラシックマニアだったようで未開封のCDをわんさか差し押さえてきたのです。
その頃僕は声楽曲にハマっていたのですが、その社長さんのコレクションにもオペラや宗教曲がたっくさんあったのです。カール・ベーム指揮の「ニーベルングの指環」全曲の12枚組ボックスとか、100年近く前のメトロポリタン歌劇場の大歌手たちのヒストリカル録音6枚組とか。あれもこれも聴きたくなってしまいどんどん手に取ってしまったのですが、その中にあったのがこのエルガーのオラトリオでした。

で、もちろんこの「神の王国」というオラトリオ自体も素晴らしい曲だったのですが、僕がノックアウトされてしまったのは、ディスク2の終わりにオマケのように入っている2曲だったのです。

バッハ〜エルガー編曲
幻想曲とフーガ ハ短調(BWV537)

ヘンデル〜エルガー編曲
序曲 ニ短調(シャンドス・アンセム第2番より)

この2曲でした。
どちらもバロックのオルガン曲をエルガーがオーケストラに編曲したものなのですが、これが…とてもバロックには思えない、ロマンチズムが炸裂したバッハとヘンデルになっているのです!
初めて聴いた時からすっかり虜になってしまいました。
特にバッハのほうなんて、原曲は17世紀の教会の雰囲気たっぷりの厳かな曲なのに、エルガーが編曲するとティンパニのマレットのロールがドロドロしてたりとか、ホーンセクションがハイノートで大活躍したりとか、打楽器も大爆発していて、メロディーも構成も忠実にバッハなのにもかかわらず、完全に20世紀のエルガーの音楽になっているのです。
幻想曲の部分は現代の映画音楽にしても全く違和感がないくらいにムーディーで、悲劇に溢れた雰囲気が非常に重たく包み込んできて、部屋を真っ暗にして目を閉じて眉間にしわを寄せたくなってしまうような音楽です。ストリングスが涙が出そうなくらいに美しくて、実に厚みのある感動的な曲になっています。
対して後半のフーガは、もうまるでお祭りのように盛り上がる盛り上がる!打楽器も金管楽器も待ってましたとばかりに大爆発してしまうのです!もう、ふざけてるのかと思うくらいにドッカンドッカンしてて、まるでバロックの面影はありません。でもちゃんとフーガなので同じモチーフがどんどん重なっていくのですが、畳み掛けるという表現がぴったりなくらいにどんどんヒートアップしていくのです。車の運転をしながら聴いていると、つい大声でイェェェーーーーッ!!と咆哮してしまうくらいです。なんとも痛快な、スカッと気持ちの良い非常にカッコいい大迫力の編曲です。バッハが聴いたらきっと腰抜かすでしょうね。(^_^;)

ライナーノーツに書いてあるのですが、この編曲が出来た経緯がまた面白いのです。

1920年にエルガーは友達のリヒャルト・シュトラウスとパリのカフェでランチをしていたそうです。その時に話しが盛り上がって、エルガーが「実はさぁ、バッハのオルガン曲をオーケストラ編曲したいな〜って思ってたんだけどさ。後半のフーガを僕が編曲するから、前半の幻想曲を君やらない?そして合作で出版したら面白いと思うんだけど。どう?」それを聞いたシュトラウスは二つ返事で「へー!面白そうだね!いいね、よし!ぜひ2人でやろう!」と約束をしたそうです。エルガーはさっそく取り掛かり、翌年の4月にはフーガの編曲を完成させ、あとは幻想曲の仕上がりを待つばかりだったのですが、当のシュトラウスがいつまでたっても取り掛かる気配を見せません。(当時のリヒャルト・シュトラウスはすでに超売れっ子オペラ作曲家、指揮者だったので忙しかったのかもしれませんね)そこでエルガーは「もういい!自分でやる!」と、しびれを切らして幻想曲の方も手がけ、1922年6月には出来上がったそうです。
でも、これはエルガーが両方編曲して大正解だったのではないかと思います。本当にエルガーらしい!フーガのノリノリの盛り上がりが威風堂々第1番の元気がいい部分の盛り上がり方と似ている気がします。

しかも、この演奏がまたキレッキレですごいのです!特に管楽器。 トランペットなんてジャズプレイヤーばりにハイノートを炸裂させていて、ものすごく気持ちいい!
僕はその後エサ・ペッカ・サロネン指揮のこの曲も聴いたのですが、キレッキレさでこちらのレナード・スラットキンに軍配が上がります。
ところで、このCDを入手した頃、ちょうどつくばのホールにスラットキンがフランス国立リヨン管弦楽団を連れて公演に来たのです。しかも、ソリストにマルタ・アルゲリッチを連れて!もちろん聴きに行きました♪

なんだか、半分くらいただの思い出語りみたいになってしまいました。(^_^;)
年を取った証拠かもしれませんね。いかんいかん。

というわけで、お気に入りの一枚、スラットキン指揮の、バッハの幻想曲とフーガ(エルガー編)でした。

長々と失礼いたしました。m(_ _)m


おわり

今日は、とにかく走った一日でした。
午前中は日本橋。午後は春日部。夕方に船橋。
という、東京・埼玉・千葉の3県にまたがるドライブの一日でした。
なかなか忙しい日でしたが、どのピアノもそんなに変わったことはなかったので…特に日記に書くような事がない、そんな日は…


「お気に入りの一枚」

を、始めることにしました!!

家にある膨大なCDやDVDなどのディスクの中から、お気に入りを一枚ずつご紹介するコーナーです♪
全くの自分の趣味の押し付けでしかないのですが、以前からどうしてもやってみたかったのです!
音楽の趣味なんて人それぞれですから、異論はたくさんあると思いますし、僕の感想など大きなお世話かもしれませんが、まあそのときはやんわりと聞き流してくださいませ。m(_ _)m

さて!

では、さっそくですが、僕のお気に入りの一枚目はこちら。




アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリのピアノによる、バッハのシャコンヌ(ブゾーニ編)が収められた一枚。

このCDは、18歳くらいの頃につくばの石丸電気で購入して以来、20年間僕の宝物です。その頃僕はつくばの石丸電気のクラシックCDのコーナーに通い詰めていました。当時はCDのレンタルもそんなに充実していなかったし、YouTubeはおろかインターネットで検索すれば何でも聴けるなんて時代ではなかったので、聴きたい曲があればディスクを買うしかなかったのです。
当時はバイト代をほとんどCDに注ぎ込んでいたのですが、このミケランジェリのシャコンヌに出会えたのは本当に幸運でした。

まるで今にも世界が終わってしまいそうな緊迫感。この世の終焉の音楽というのがあるとしたら、この演奏ではなかろうかというくらいに、世紀末的というか末日的な音楽です。
逃げ惑う人類が絶望のうちに天を仰ぎ見るときに、炎に包まれた空の真っ黒な雲の隙間からから神の裁きの光の筋が地に降り注ぎ…
というような壮大な妄想を膨らませてしまうくらいに、鬼気迫った、神がかった音楽です。
バッハの音楽って敬虔な穏やかな気持ちにさせられるものがたくさんありますが、このミケランジェリの演奏はそういう救いを祈り求める清らかな音楽というよりは、悔恨の叫びを上げながらもやはり滅ぼされてしまうような、そんな苦しい祈りの音楽な気がします。

そんな凄まじい音楽を、まだ思春期が抜けきらない頃に聴いてしまったものですから、その衝撃と影響は絶大で、うっかりまともな社会人として生きていけなくなるところでした。危なかったです。

でも、ミケランジェリの圧倒的な演奏のパワーのおかげで、その後の人生がどんなに豊かになったことか。出会えて良かった一枚です。僕は死ぬときはこの演奏を聴きながら死にたい、って思うくらいです。

ミケランジェリの録音は1970年代が一番たくさんされたそうですが、このディスクはその絶頂期のちょっと前の1968年の録音で、圧倒的なスピードと驚くべき正確さは、もう人間がしている演奏にはとても思えません。この曲のこんなに早い演奏は他に聴いたことがありませんが、そんなに早いのにもかかわらず全然音が濁らずグシャっと混ざり合うことはなく、隅々まで冷徹なまでにクッキリしています。録音は古いから雑音も多いのですが、そんなこと全く気にならないくらいにグングン引き込まれてしまいます。恐ろしいくらいに完璧な演奏です。なのに何て神々しさ!これこそ天上の音楽!!


ミケランジェリは完璧主義者とかキャンセル魔とか変人とか言われたそうですが、僕が一番好きなエピソードは、今現在の世界最高のピアニストの一人、マルタ・アルゲリッチが若い頃ミケランジェリに教えを受けたいとお願いして弟子入りさせてもらったそうですが、ミケランジェリはほとんどピアノは教えず、アルゲリッチと卓球ばかりやっていた、というエピソードです。(^_^;)
しかも、ミケランジェリの卓球の腕前はとても下手だったとか。

天は二物を与えず、なんですかね。
一つだとしても凄まじい才能ですが。

というわけで、最初のお気に入りは、アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリの「シャコンヌ」でした。(o^^o)


おわり




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