ヘルムート・ヘンヒェン＠新国立劇場 | 調律師のあっちこっち日記

2009.12.15 Tuesday
ヘルムート・ヘンヒェン＠新国立劇場

１１月４日のつづき！！

　
　この日僕は初台の新国立劇場に変わった調律の依頼を受けて来ていたのですが（前の日記をご覧ください♪）、調律が終わってチェックをしに現れた指揮者というのはなんと・・・

・・・！！！！

んん？？

まさか！

ヘルムート・ヘンヒェン？？？

∑(￣ﾛ￣|||)！？
　

予想だにしなかったまさかの大指揮者が目の前に！！

ヘルムート・ヘンヒェンといえばあの巨匠カラヤンの弟子で、オランダのネーデルランドフィルやベルリン室内管弦楽団をはじめ、ヨーロッパの数多くのオーケストラの指揮者を歴任している超有名指揮者です！　　僕の調律をチェックしにくるドイツ人の指揮者って・・・この人だったんですかщ(ﾟﾛﾟщ)　早く言ってよ。。。

調律が終わって練習室の中をブラブラしていた僕に、そのマエストロが満面の笑みで右手を差し出し。。。

「Nice to meet you」

と握手を求められて！☆

ドイツ語はもちろん英語もできない僕はただ笑顔で握手するしかなかったわけですが・・・それだけで感激！！！！

とはいっても、そのマエストロが今から僕の調律をチェックするわけで！

やっぱり緊張！！Σ(ﾟ口ﾟ;

さっそくピアノの前に立ったマエストロが、和音をジャーン♪と鳴らして・・・

額に手を当てうなだれて。。。

通訳の方に何か話して

通訳の方が

「どうやら音の狂い方がキレイすぎるようです。　こんなにどの音も均一に狂わせるのには相当な技術と努力が要ったことは良く分かる。　でも彼が求めているのは、もっとランダムな、不規則な狂い方なのです」　と。。。

どうやら気合を入れて狂い方をキレイにそろえすぎたようです。。。

マエストロが言うには、この場面は１８世紀のドイツの古い酒場でなので、２０年も調律していないうえにビールがたくさんかかってしまってボロボロになっているピアノの音をを再現してほしいそうです。　なのでこんなに均一に狂い方をそろえるのではなく、ある音はすごく狂ってるけど隣の音はそうでもない、みたいな不規則な狂い方がご所望だったようです。　

もちろんマエストロには笑顔でＯＫマークを出し、さっそく調律の手直しを開始。　今度は遠慮せず思い切り狂わすことに。。。

マエストロはすぐに別の部屋に行ってしまったので、修正してからの音はオペラ製作担当の方に見てもらったのですが、これならたぶんマエストロもＯＫだろうということで仕事が終了しました。

　　
というわけで結局それっきりマエストロには会わなかったし、仕事が忙しくてオペラの本番も聴きにいけなかったのですが（ホントに残念！）、またとない良い経験ができた新国立劇場でした♪　　なんとなく尻すぼみな感じもしますが。。。

ところでこのオペラはアルバン・ベルク作曲の「ヴォツェック」という作品だったのですが、その新国立劇場のサイトはこちら。

せっかくなのでネットで見つけたヴォツェックの映像もご紹介します。　こちら。　

これはどこか海外での映像で、演出家が違うらしくピアノは回転してはいませんね。。。　でもモヤモヤ狂った音はまさしく僕も目指した古い酒場のピアノの音です♪　お分かりになりますか？☆☆

そんなわけで、調律師人生初の狂わせる調律は無事に（？…）すみました♪　なにより世界の巨匠である指揮者ヘルムート・ヘンヒェン氏と直に会って、仮にも同じ作品を作るために協働したっていうのが感動感激でした！！！　

ひとつ不安なのは、新国立劇場ではあんな調律をしたピアノを公演が終わった後はいったいどうしているんだろうか？　ってことです。　あの変な調律のまま小道具として倉庫で眠っているのでしょうか？　調律師としてはあのピアノの安否がすこし心配です。

でもそれよりも何よりも、マエストロ「ヘルムート・ヘンヒェン」にお会いできたのが最高の経験でした♪(*"ー"*)ﾌﾌｯ♪

　

　